病院再建

何も知らないで転職してきた病院は借金20億の経営不振な病院でした。
なぜか理事長を引き受ける事になり、経営やマネジメントの知識が全くない状態から手探りで経営の再建を行った記録です。
今振り返れば、もっとうまくやる方法がたくさんあったようにも思いますが、素人だったので悪手もうってました。

Ⅲ-14 債務超過で実は困っていた事

理事長に就任してから支援機構から支援受けるまでの間、常勤医が二人きりになったり、院内で陰口を叩かれたり、大変だった事をちらほら記事にしてきましたが、それ以外にも散発的に困った事が起こっていました。

リースが組めない

手元にキャッシュがあまりないので、大きな買い物はリースを組む形になることが多かったのですが、審査がなかなか通らなくて、何社にも書類を出さないといけなかったです。しかもリースが組めてもこの超低金利のご時世なのに金利が7%超えてるとか(そんなんなら自分が貸したいわ、と思っていました)。

住宅ローンの審査に落ちる

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Ⅳ-7 気が付けば卒業

計画に織り込んであった当初の落ち込みを横ばいで乗り切ったため再生計画は1年半~2年程度前倒しで進みました。

これといった大きな事件はなかったけど

理事長を引き受けたところや支援機構に再生を申し込む時のようなドラマチックな展開は特にありませんでした。

当初は3~5年で卒業を予定していたのですが、1年半で卒業できそうな業績でした。

まとめてみると

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Ⅳ-6 卒業が視野に

再建計画上は当初の1年程度は落ち込んでその後徐々に上昇していく計画でしたが、幸いなことに落ち込みがほとんどなく体質改善が進み、その後業績が伸びていきました。

ほぼ放牧に

支援中はモニタリング会議といって、支援機構、メインバンクと三者で毎月の報告がありました。当初は支援機構からはプロジェクトリーダー的な方、銀行も本部の方が二名と担当の支店長、支店の担当者と大勢の方が参加していたのですが、途中からは支援機構から一名、銀行からは支店の担当者の一名のみの参加になっていました。それだけうまくいっているという風に前向きに解釈していました。

医師がさらに増える

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Ⅳ-5 順調な経過

病院の体質改善のためには一時的に業績が落ち込む事を覚悟していました。

落ち込みはほとんどなく体質の転換が進む

事前の再生計画では当初の一年は、体質改善を行うためには業績は落ち込むだろうと計画していました。いわゆる大きくジャンプするためにはその前には一度膝を曲げないといけない、ってやつです。

ところが、実際はほぼ横ばいで体質転換が進みました。

その理由は 続きを読む

Ⅳ-4 利益を増やすためには経費を削ればいいのでは?

1つ前の記事で利益を増やすためには、売り上げを上げましょう、そのためにこのように目標共有しました。という内容を書きました。

通常の企業であれば、利益向上のために最初に取り組むのはむしろ経費削減だと思われます。そこに手をつけないなんて素人だな、と思われた方もいらっしゃると思います。素人であった事はあながち間違いではないのですが、そこには医療・介護業界ならではの事情もありました。

経費の60%が人件費

病院における最大の経費は人件費です。日本は正社員の身分ははんぱなく保証されていますから、簡単にはリストラできません。では非常勤を中心にすればいいと思われるかもしれませんが、非常勤の方もそれぞれ毎月これくらいは稼ぎたいという思いをもって働いていらっしゃる方がほとんどですから、あまりこちらの都合を押し付けると辞めてしまいます。今はほんとに人が雇えないご時世ですから職員が辞めてしまうとその採用のために費用がばく大にかかってしまい本末転倒になります。

病院には基準数というものがある

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Ⅳ-3 利益を増やすには?KPI・KGI

前の記事で利益の基本を述べましたが、具体的には何をやればいいのでしょうか?

売り上げを増やすには?

病院の売り上げは患者数×入院単価で決まります。職員に「稼働をあげよう(=患者数を増やそう)」というのはまだいいと思いますが、「単価をあげよう」と言ってもそのためには具体的に何をすればいいの?って事になります。

単価を上げるには?

単価を上げるためには単価がどのような内容で決まっているのかを分析する必要があります。ほとんどの病院でレセプトは電子化されていると思いますので、レセコンからデータを出力し、最低でも数か月、できれば2年くらいは遡ってデータを見てみます。その時わからない項目があれば白本を読みましょう。しろぼんねっと(しろぼんネット)などのサイトを使ってもいいと思います。

KPI・KGIとは?

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Ⅳ-2 病院の利益についての一般論

病院の経営状況を改善するために何をやるのが適切なのか、一般論を今回は書きたいと思います。

利益とは?

まずは利益についてざっくり整理したいと思います。細かいことは別の記事にまとめる予定です。

経常利益=売り上げ―経費

純利益=経常利益―税金

手元に残るお金はイコール純利益ではないですが、ひとまずはそう考えていただいても構わないと思います。

利益がどれだけ必要か?

借金の返済がいくらあるかで決まってきますが、税金を支払った後のお金が年間の返済額を上回っていないといけません。

わかりやすく返済額を一年1億とすると、1億/0.7≒1.4億となります。ざっくり4割増しの経常利益が必要となります。

利益を増やすには?

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Ⅳ-1 支援開始

メインバンク以外の借入先からも債権放棄の承諾を得たので、支援開始となりました。

発表から他行の承認まで

通常、支援が決定した後関係金融機関の反対で支援開始できないということはないと聞いていたので、わたしはのほほんとしていましたが、他行から承諾を得られたという連絡をしてくれた時の関係者の喜びようから判断するに、実はそんなに楽観視できない事だったのかなと思いました。とはいえ当法人の支援も夏に正式決定し、いよいよ支援開始となりました。

支援開始にあたって

支援開始にあたって、債務カットと1名支援機構から法人に人を送ってもらえます。その人が来て最初に行うことは、まずは法人内の問題点をもう一度洗い出してその問題点を職員が認識して改善に取り組むというプロセスです。それにあたって法人内にそれぞれの問題に対してのプロジェクトチームを作り、プロジェクトチームで色々話し合っていくという形式をとることになりました。プロジェクトチームのメンバーは法人内から選抜します。そういったプロジェクトチームはJALの時にも行われたようです。この当時私は、JALのような一流企業であれば当然優秀な人材がたくさんいるので、法人内でプロジェクトチームを作ってもいろいろといいアイデアは出るだろうと思いましたが、うちの場合はそういったいい人材が本当にいるのかなと、このプロジェクトチームに対してはかなり懐疑的でした。

問題点の洗い出し、実はコンサルタントは多くの事はしてくれません

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Ⅲ-13 支援機構から再生支援を受ける事を発表

私は覚悟を決めて支援機構に再生をお願いすることにしましたが、私が決めたからと言って支援が決定とはなりません。

関係省庁の承諾は?

支援機構は内閣府が作った組織でしたからまずは内閣府の承諾が必要です。それをもらった後、関係省庁の承諾が必要となります。うちの場合は病院でしたから厚生労働省の承諾が必要でした。当時からすでに精神科病床が多すぎる事が問題視されていて、そんなところは潰してしまえば病床も減るから好都合と言われてしまったらそれまでです。そうならないためのロジックとして平均在院日数の大幅な短縮を計画に盛り込んでいます。もし平均在院日数を1/3にできるなら大きな意義がある、とお言葉をいただき承諾されました。

借入先からの承諾

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Ⅲ-12 医師が一人増えるって大きいです

連帯保証を引き受けて、支援機構の再生支援を受ける事を決めた頃

常勤医が一人増えそう

前年の4月に入職した先生の少し先輩の先生が4月から常勤で来てくれる事になりました。

常勤医2人でサテライトクリニックも2月にオープンしていたので、本当に助かりました。

精神科医は規定上は48名まで受け持つ事ができますが、急性期の患者さんが含まれての48名はなかなかに厳しいものがあります。

非常勤の先生も増えることに

いいことも悪いこともえてして重なるもので、4月から一泊二日で来てくれる非常勤の先生も増える事になりました。

これでサテライトクリニックも週に5日診察することができます。

医師がひとり増えると?

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