相模湖病院再建、機構卒業まで

Ⅲ-2 病院って儲からないんです

自分が経営に関わるようになる前は病院の経営って儲かるんだと思っていました。ある程度以上の病院の院長、理事長なんて言ったらお金持ちってイメージありますよね?

この記事の内容は当時のわたしは理解していない内容でした。このブログでは基本的に当時の自分の理解をなるべく再現するように心がけていますが、今だからわかる事も時々記事にしていきたいと思っています。

厚労省発表の全国の病院の平均的利益率

厚生労働省が発表している資料でH27の病院経営指標をみると
199床以下の精神科病院の利益率が2.1%、200-299床の精神科病院が4.1%、300-399床が5.0%、400床以上で5.4%となっています。
相模湖病院は実質187床で回していたので全国平均だと2.1%です。

多くの精神科の収入源

当時(今でもかもしれませんが)、精神病院のドル箱は療養病棟とデイケアだと言われていました。療養病棟は単価は安いですが、スタッフの数が少ないので利益が出しやすいです。ちなみに相模湖病院は廊下幅が数センチ足らなくて療養病棟には転換できませんでした。デイケアは算定できる日数が少しずつ削られてきているので、今となっては当時ほどの利益は見込めないと思われます。相模湖病院のデイケアは参加者が多い日でも5名で収入源どころか赤字垂れ流しでした。

病院の利益を概算、相模湖病院の場合

利益率を多く見積もって5%としましょう、精神科一般病棟の平均単価は13700円です。病床稼働率が95%としましょう。そうすると、(当時の相模湖病院の実際の数字とは異なります)

187×0.95×13700×365=888338825(売り上げ)×0.05=44416941.25(利益)

となります、利益は約4500万という事になります。それに外来や自費分の収入をいれて、合計5000万の利益があるとしましょう。 続きを読む

Ⅲ-4 病院の改革のために

細かな改革を苦労しながらすすめていくうちに数か月が過ぎ、旧知の小児科医とクリニックを立ち上げる話が浮上してきていました。(はしもと開業記事一覧)それとは別に病院の更なる改革のためにはまともな精神科医が最低あと一人ほしい状況でした。

製薬会社の講演会の司会

製薬会社主催の勉強会で、司会をしてほしいという依頼がありました。当時忙しかったので引き受ける事は大変だったのですが、少しでもつてを作りたいと思い引き受けました。名古屋の大学を出て名古屋の医局に所属し名古屋で働いていたので、当時の私は関東で知り合いと呼べる先生がほとんどいませんでしたから、そういった機会に少しでも知り合いを増やしたいなと思ったのです。

講演会の慰労会で

その際メインの講演をする先生、当時5年目か6年目の指定医をとったばかりの先生ですが、その先生と打ち合わせと打ち上げで会食する機会がありまして、それなりに意気投合して、その直後の地方の学会でも食事をする事になりました。当時はすでに製薬会社主催の会食はなくなっていたのですが、講演会はまだまだありました。

常勤医が増える事に

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Ⅲ-5 メインバンクからの提案

名ばかりとはいえ理事長になりましたから渉外業務も少しずつ出てきます。病院の改革と並行して少しずつこなしていきました。

メインバンク担当者と面会

当時のメインバンクは某大手地方銀行で、そこから10億円強の借入金がありました。債務超過になっていますから、うちの担当は支店の担当者ではなく、経営が危ない取引先を担当する本部の部署が担当でした。いいスーツを着たその担当者と面会すると、「法人の最高責任者である理事長と連帯保証人が異なるというのはコンプライアンス上好ましくない」という事を言われました。遅かれ早かれそういう事を言ってくるだろうと予想していたので、「とはいえ、わたしとしても自分に一切責任のない債務の事は責任を持ちたくない、むしろここまで貸し付けた方の責任もあるんじゃないですか?」と返しました。

メインバンクからの提案

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Ⅲ-3 病院の改革は遅々として進まず

という事で入職半年弱で雇われ理事長へと就任してまずは病院の改革です。

病院が大きく赤字の理由

引き受けた記事には書きませんでしたが、200床弱の病院がそこそこ満床で年間8000万超の赤字ってありえないから、もう少し普通にやればもっと業績は改善するだろうという何となくの見通しもありました。
実は後々知る事になるんですが、この8000万の赤字というのは裏があって、本部経費(借入金の利息だけで6000万超で、本部経費の総額は不明でした)を会計処理上全額病院の経費として算入していました。としても病院単体で0~2000万程度の黒字とみなされますからもう少し何とかなるはずです

経営面の改革に手をつける前に

経営的な事はひとまずおいて、臨床面の充実と、仕事の効率アップに取り組もうと思いました。本来の業務に割ける労力を増やす事ができますから、仕事の効率アップは必要です。また、臨床面を充実させる事はこういううまくいっていない病院の場合は必須と考えられます。医療・介護職の方々に経営の事を言うと、「それは患者(利用者)のためにならない」というようなエクスキューズを声高に唱える人が必ず現れます。多くの場合、そういう人はそれをエクスキューズにしているだけで、現状のぬるま湯体質が居心地のいい方たちです。そこで、いい医療を提供するためにこれは必要です、とこちらも主張する必要があるわけです。

実際には経営面の改革に手をつけるには当時のわたしはスキル不足だったというのもありました。

臨床面の充実のために

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転職したらいきなり借金20億の病院理事長になった件

転職した先の病院で、一か月でオーナーが急逝し、理事長をお願いされたら、借金20億、債務超過10億でした。

相模湖病院の病院運営、債務超過脱出までをまとめました。

ラノベ風に言うならば、「転職したらいきなり借金20億の病院理事長になった件」です。

 Ⅰ章 転職まで

Ⅰ-1 医局の庇護からの脱出?

Ⅰ-2 医師の転職~土地勘がない場所での病院探し、医師紹介会社を使う~

Ⅰ-3 病院見学 医師紹介会社のエージェントは役に立つ?

Ⅰ-4 病院決定~密かな野望~

 2章 転職後~半年で理事長就任

Ⅱ-1 トンデモ院長part1

Ⅱ-2 トンデモ院長part2

Ⅱ-3 トンデモ精神科医

Ⅱ-4 不思議なマネジメント形態

Ⅱ-5 入職一か月で理事長??

Ⅱ-6 借金20億!債務超過?BS?PL?

Ⅱ-7 どうして20億も借金が?

 3章 理事長就任後~支援機構の支援開始

Ⅲ-1 理事長を引き受ける?

Ⅲ-2 病院って儲からないんです

Ⅲ-3 病院の改革は遅々として進まず

Ⅲ-4 病院の改革のために

Ⅲ-5 メインバンクからの提案

Ⅲ-6 再生支援機構のスタッフ来院

Ⅲ-7 再生支援機構に支援をお願いするか?

Ⅲ-8 常勤医二人のみ

Ⅲ-9 再生計画をめぐる綱引き

Ⅲ-10 債務カット10億!

Ⅲ-11 最終決断、連帯保証を引き受ける?

Ⅲ-12 医師が一人増えるって大きいです

Ⅲ-13 支援機構から再生支援を受ける事を発表

Ⅲ-14 債務超過で実は困っていた事

 4章 支援開始から卒業まで

Ⅳ-1 支援開始

Ⅳ-2 病院の利益についての一般論

Ⅳ-3 利益を増やすには?KPI・KGI

Ⅳ-4 利益を増やすためには経費を削ればいいのでは?

Ⅳ-5 順調な経過

Ⅳ-6 卒業が視野に

Ⅳ-7 気が付けば卒業

Ⅳ-8 色々書けなかった事