相模湖病院再建、機構卒業まで

Ⅱ-7 どうして20億も借金が?

そもそもどうしてそんな多額の債務を抱える状態になってしまったのでしょうか?当時はわからなくて、その後支援機構がはいった後から徐々に詳細がわかってきました。時系列的にはどこに書けばいいのかわからなかったので章の区切りのいい、ここに書きたいと思います。

病院の建築費用

病院を建築するには現在だと100床で10億以上必要です。

相模湖病院は約100床の建物が2つありますがこのうちの新しい方の建物の建築費用の返済がまだ終わっていませんでした。

(病院の建築費用をまるまる負担して病棟の新築をすると経営はかなり厳しくなります、経営不振に陥る病院の何割かは病棟の建て替えを契機にしています) 続きを読む

Ⅲ-14 債務超過で実は困っていた事

理事長に就任してから支援機構から支援受けるまでの間、常勤医が二人きりになったり、院内で陰口を叩かれたり、大変だった事をちらほら記事にしてきましたが、それ以外にも散発的に困った事が起こっていました。

リースが組めない

手元にキャッシュがあまりないので、大きな買い物はリースを組む形になることが多かったのですが、審査がなかなか通らなくて、何社にも書類を出さないといけなかったです。しかもリースが組めてもこの超低金利のご時世なのに金利が7%超えてるとか(そんなんなら自分が貸したいわ、と思っていました)。

住宅ローンの審査に落ちる

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Ⅲ-13 支援機構から再生支援を受ける事を発表

私は覚悟を決めて支援機構に再生をお願いすることにしましたが、私が決めたからと言って支援が決定とはなりません。

関係省庁の承諾は?

支援機構は内閣府が作った組織でしたからまずは内閣府の承諾が必要です。それをもらった後、関係省庁の承諾が必要となります。うちの場合は病院でしたから厚生労働省の承諾が必要でした。当時からすでに精神科病床が多すぎる事が問題視されていて、そんなところは潰してしまえば病床も減るから好都合と言われてしまったらそれまでです。そうならないためのロジックとして平均在院日数の大幅な短縮を計画に盛り込んでいます。もし平均在院日数を1/3にできるなら大きな意義がある、とお言葉をいただき承諾されました。

借入先からの承諾

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Ⅲ-12 医師が一人増えるって大きいです

連帯保証を引き受けて、支援機構の再生支援を受ける事を決めた頃

常勤医が一人増えそう

前年の4月に入職した先生の少し先輩の先生が4月から常勤で来てくれる事になりました。

常勤医2人でサテライトクリニックも2月にオープンしていたので、本当に助かりました。

精神科医は規定上は48名まで受け持つ事ができますが、急性期の患者さんが含まれての48名はなかなかに厳しいものがあります。

非常勤の先生も増えることに

いいことも悪いこともえてして重なるもので、4月から一泊二日で来てくれる非常勤の先生も増える事になりました。

これでサテライトクリニックも週に5日診察することができます。

医師がひとり増えると?

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Ⅲ-11 最終決断、連帯保証を引き受ける?

再生計画の最終案、債務カットの額、などが出そろって、いよいよ最終決断です。この時点でやっぱ無理です。と言ったらヒンシュクを買うのと、費用が1000万ほどかかりますが、まだ一応後戻り可能でした。

再生支援を受けた場合のメリット

まずは10億の債務カットです。これの利息だけで3000万弱収支が改善します。

もう1つは支援機構からスタッフが送ってもらえること。わたしは、経営、マネジメントは素人でしたから助かります。

受けた場合のデメリット

連帯保証人にならないといけないので、もし再建に失敗したら、その時点でいったん自己破産です。

気になる点 続きを読む

Ⅲ-10 債務カット10億!

再生計画は、熾烈な綱引きののちにほぼほぼ最終案ができてきました。

資産の再評価ののち、債務超過は12億強

再建計画を立てると同時に資産の簿価の見直しも行われました。建物や土地などを含めた資産から債務を引いたらマイナス10億ですよ、といわれていたわけですが、それはあくまで帳簿にのせた時点の価値でありますから、資産の価値を再評価してみる事になりました。このような作業は通常行われるようで、JALの時も行われています。

なぜ行われるのかというとその時の資産を適正価格で評価する必要があるという事。債務カットが行われると、カットされた分は利益になってしまいます。利益になればその部分には法人税がかかってしまうので簿価損を算入して利益を圧縮するという狙いもあります。JALはこの時に航空機の簿価損が莫大で何年間も法人税を払わなくてよくなった事は有名です。

当法人も資産の再評価を行ったところ簿価が下がり、債務超過は増加して債務超過は12億強という事になりました。

再建計画の最終案は?

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Ⅲ-9 再生計画をめぐる綱引き

引き返せるぎりぎりまでは進んでみようと決意し、支援機構に現状分析をお願いしました。

メインは病院再生計画

法人の再建の中でもメインとなるものは病院の再生で、支援機構が再生を支援するからには、旧来の精神科病院のスタイル(患者さんを入れっぱなしにするというスタイル)からの脱却というものがメインテーマになりました。

新入院患者数5倍?

コンサルタント会社(転職の時に見学行った病院の経営をしていた会社でした)(Ⅰ-3 病院見学 医師紹介会社のエージェントは役に立つ?)や再生支援機構のスタッフからあった提案は、毎月の入院を30名にしましょうというものでした。ちなみに私が入職する前は、1日3人しか診れない院長でしたから月の入院が数名という状況でした。(Ⅱ-2 トンデモ院長part2 )。私が入職した後でもやっと月5名くらい、年間で60名程度でしたから約5倍です。

30名というのは途方もない数字です。200床弱の病院で30名毎月入院するということは3か月で半分の患者さんが入れ替わっているという状況ですから。

新入院毎月30名の根拠は?

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Ⅲ-8 常勤医二人のみ

支援機構に現状分析をお願いしようかどうしようか悩んでいる時に病院で大事件です。

院長が交代して

4月からは前述(Ⅲ-4 病院の改革のために)の先生が入職してくれて、わたしが院長兼任になり、医局の体制はかなり強化されました。

新しく来てくれた先生の診断や投薬は、腑に落ちるもので、安心して任せられました。

そのため急性期亜急性期の病棟はわたしとその先生の二人で診て、それ以外の病棟は非常勤の先生ともともといた常勤の先生で診る体制で固まっていきました。

病院の改革も

もともとトロイカ体制で運営していた(Ⅱ-4 不思議なマネジメント形態)わけですが、毎週一回はそれまで三者で行っていた会議にも顔を出し、四者での会議とし、決めないといけない事、改善しないといけない事をわたしの名の下にスピード感を持って進めていくようにしていきました。

それと並行して、わたしはサテライトクリニックの開院準備や支援機構の話をどうしていこうかなどに頭を悩ませていました。

常勤の医師から辞表が提出される

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Ⅲ-7 再生支援機構に支援をお願いするか?

支援機構のスタッフからはわたしを中心に再建を図る方向で、と提案を受けましたが、それはすなわち連帯保証人になるという事です。債務カットがどれくらいされるのかわかりませんが、現状借金は20億です。

もし支援を受けなければ

わたしが転職する前年の決算では法人全体で100万の経常利益、わたしが転職して一年目が5000万程度の経常利益、経営に関心のない院長が交代したのでもう少しはよくなるだろうという事で仮に経常利益が7000万としても、記事に書いたように(Ⅱ-6 借金20億!債務超過?BS?PL?)債務カットがなければどこかで大きな修繕がきた時点で詰みます。

もう少し、利益が増やせて、かつ15年くらい大きな修繕がこなかったとしても(かなり都合のいい仮定です、こういう発想はだいたい失敗をします)連帯保証人になっている方が70歳を超える高齢で、いつ亡くなるかわからない。もし財務状況があまり改善していない早期に亡くなってしまうとそれでも詰みます。

もし支援を受けたら

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Ⅲ-6 再生支援機構のスタッフ来院

メインバンクから提案のあった再生支援機構の事をどうしようかとしばらく悩みました。

メインバンクの思惑がやはりわからない

先ほどの記事(Ⅲ-5 メインバンクからの提案)にも書きましたが、銀行にとって利益がなければこの話はもってこないだろうと考えていました。でもわたしに思いつく銀行のメリットははたしてそれなりの債務カットに見合うものなのか判断ができません。メインバンクからの出向だった経理部長に聞いてもはっきりしません。

自分にとってのデメリットは?

そこで逆に自分にとってデメリットがあるのかを考えてみたり、友人の弁護士に聞いてみたりしました。

最大のデメリットは連帯保証人になる事で、それはハンコを押さなければいきなりなるという性質のものではありません。しかも当時の私には資産らしい資産もありませんでしたから、万が一連帯保証を引き受けても被害は限定的だろうと考えました。

虎穴に入らずんば虎子を得ず、まずは支援機構の人と会ってみようと思い、そのように返事をすると、後日、支援機構のスタッフが来院することになりました。

実は二回目の訪問

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