病院運営

Ⅲ-5 メインバンクからの提案

名ばかりとはいえ理事長になりましたから渉外業務も少しずつ出てきます。病院の改革と並行して少しずつこなしていきました。

メインバンク担当者と面会

当時のメインバンクは某大手地方銀行で、そこから10億円強の借入金がありました。債務超過になっていますから、うちの担当は支店の担当者ではなく、経営が危ない取引先を担当する本部の部署が担当でした。いいスーツを着たその担当者と面会すると、「法人の最高責任者である理事長と連帯保証人が異なるというのはコンプライアンス上好ましくない」という事を言われました。遅かれ早かれそういう事を言ってくるだろうと予想していたので、「とはいえ、わたしとしても自分に一切責任のない債務の事は責任を持ちたくない、むしろここまで貸し付けた方の責任もあるんじゃないですか?」と返しました。

メインバンクからの提案

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Ⅲ-3 病院の改革は遅々として進まず

という事で入職半年弱で雇われ理事長へと就任してまずは病院の改革です。

病院が大きく赤字の理由

引き受けた記事には書きませんでしたが、200床弱の病院がそこそこ満床で年間8000万超の赤字ってありえないから、もう少し普通にやればもっと業績は改善するだろうという何となくの見通しもありました。
実は後々知る事になるんですが、この8000万の赤字というのは裏があって、本部経費(借入金の利息だけで6000万超で、本部経費の総額は不明でした)を会計処理上全額病院の経費として算入していました。としても病院単体で0~2000万程度の黒字とみなされますからもう少し何とかなるはずです

経営面の改革に手をつける前に

経営的な事はひとまずおいて、臨床面の充実と、仕事の効率アップに取り組もうと思いました。本来の業務に割ける労力を増やす事ができますから、仕事の効率アップは必要です。また、臨床面を充実させる事はこういううまくいっていない病院の場合は必須と考えられます。医療・介護職の方々に経営の事を言うと、「それは患者(利用者)のためにならない」というようなエクスキューズを声高に唱える人が必ず現れます。多くの場合、そういう人はそれをエクスキューズにしているだけで、現状のぬるま湯体質が居心地のいい方たちです。そこで、いい医療を提供するためにこれは必要です、とこちらも主張する必要があるわけです。

実際には経営面の改革に手をつけるには当時のわたしはスキル不足だったというのもありました。

臨床面の充実のために

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Ⅲ-1 理事長を引き受ける?

このような状況で皆さんなら理事長を引き受けますか?

もし理事長を引き受けたら最大のリスクは?

当時のわたしもかなり悩みました。連帯保証人にはならなくていい、と言われていましたが、この点は遠からず、銀行から何か言ってくるだろうという予感がありました。ではもし連帯保証人を引き受けたらどうなるのでしょうか?
億単位の借入金ですから、一般人のわたしが、矢沢の永ちゃんみたいにCM出まくって何十億の借金返すとか無理ですし、自己破産するしかないのは明らかでした。

その頃のわたし自身には資産らしい資産は貯金が500万程度あるのみでしたので、経営再建に失敗して自己破産してしまっても失うのはその500万だけです。

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Ⅱ-6 借金20億!債務超過?BS?PL?

遠からず院長になることは内心想定していましたが、理事長って普通ならないですよね?それにはもちろん理由があるわけでして

債務超過と言われても

理事長を依頼された時に法人の財務状況の説明を受けました。入職前は全く知らなかったのですが、借入金が約20億円あり、債務超過が10億程度とのことでした。当時私は財務諸表を見たりだとかそういったことは全く知識がなくて、債務超過?BS?PL?経常利益?ってレベルでしたのでその場で決断できるはずもありません。いったん持ち帰らせてもらって、まずはkindleで100円とか無料の決算書の読み方的な本を何冊か読んでみました。付け焼刃ではありますが、財務諸表については少し理解しました。(債務超過や、財務諸表の見方については別のページを用意する予定です。)

当時の東華会の財務状況

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Ⅱ-4 不思議なマネジメント形態

通常の病院では、経営者として理事長がいて、院長、事務長、看護部長の三人がそれぞれの現場のトップで、そのメンバーが運営の中心という形態が多いのではないかと思います。

マネジメントを誰がしているのかわからない

相模湖病院に入職当初は、この病院はどこでなにがどのように決まっているのかよくわからないな、という印象を抱いていました。
何か新しい提案をしても、なかなか結論が出ないし、場合によってはうやむやなまま月日が過ぎるだけでした。

当時の相模湖病院は院長は前述のような方で(Ⅱ-1 トンデモ院長part1)ありましたからもちろん病院の運営にはノータッチでした。

不思議な運営状況

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Ⅱ-5 入職一か月で理事長??

合議制で運営している事は何となくわかってきましたが、理事長はいったいどこにいるのでしょう?

理事長は雇われ理事長

雇われ院長というのはよく耳にすると思います。当時の相模湖病院には理事長はもちろんいたのですが、その人は変な言い方ですが雇われ理事長で、以前に相模湖病院で非常勤をされていた先生に名前だけ理事長をお願いしているという状況でした。実質的には会長と呼ばれる人がいて、その人がオーナーでした。オーナーは相模湖病院の開設者の息子さんで、医師免許が取れなかったので理事長になれず、会長という役職でオーナーとして仕事をされていました。

オーナーの急逝

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Ⅱ-3 トンデモ精神科医

院長は事前に聞いていた以上のトンデモぶりでした。ですが、さらに以前の相模湖病院にはもっとすごい先生たちがいました。

院長はトンデモでしたが、部下の方は?

院長は前述のとおりの方でしたが、部下の方はといいますと、残念ながらこの先生はまともに精神科医としてのトレーニングを受けていらっしゃらないのではないかというのがわたしの印象でした。

処方をPSWに相談するの?

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Ⅱ-2 トンデモ院長part2

転職先の院長は勤務時間もトンデモでしたが、診療内容もトンデモでした。

Hba1cを週に二回検査

当時の院長は検査の仕方がめちゃめちゃで、たとえば糖尿病の患者さんがいらっしゃるとヘモグロビンa1cの検査を週に2回3回とオーダーしていました。すべての検査がその調子で、当然ヘモグロビンa1cを週に2回3回と検査してもレセプトは通らないので持ち出しになるわけです。それを医事の人間が院長に進言すると、「それを通すのがお前らの仕事だろう」と言って怒鳴り、カルテを投げつける始末でした。

外来は一日三人まで?

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Ⅱ-1 トンデモ院長part1

相模湖病院へと転職して勤務が始まるとまず驚いたのが当時の院長でした。

院長は14時半に出勤?

4/1からいよいよ勤務を開始しても、なかなか院長に挨拶する機会がありませんでした。というのも院長は週に4日出勤しているのですが、出勤時間が14時半くらいとまさに重役出勤で(重役の出勤が遅いのは夜遅くまで渉外活動をしているからでさぼっているわけではありません)、毎回1泊2日で病院で仕事をしていらっしゃいます。14時半に出勤した後、夕方過ぎまで院長室に引きこもっていて患者さんの診察は夕方過ぎから夜にかけてやられていました 続きを読む

転職したらいきなり借金20億の病院理事長になった件

転職した先の病院で、一か月でオーナーが急逝し、理事長をお願いされたら、借金20億、債務超過10億でした。

相模湖病院の病院運営、債務超過脱出までをまとめました。

ラノベ風に言うならば、「転職したらいきなり借金20億の病院理事長になった件」です。

 Ⅰ章 転職まで

Ⅰ-1 医局の庇護からの脱出?

Ⅰ-2 医師の転職~土地勘がない場所での病院探し、医師紹介会社を使う~

Ⅰ-3 病院見学 医師紹介会社のエージェントは役に立つ?

Ⅰ-4 病院決定~密かな野望~

 2章 転職後~半年で理事長就任

Ⅱ-1 トンデモ院長part1

Ⅱ-2 トンデモ院長part2

Ⅱ-3 トンデモ精神科医

Ⅱ-4 不思議なマネジメント形態

Ⅱ-5 入職一か月で理事長??

Ⅱ-6 借金20億!債務超過?BS?PL?

Ⅱ-7 どうして20億も借金が?

 3章 理事長就任後~支援機構の支援開始

Ⅲ-1 理事長を引き受ける?

Ⅲ-2 病院って儲からないんです

Ⅲ-3 病院の改革は遅々として進まず

Ⅲ-4 病院の改革のために

Ⅲ-5 メインバンクからの提案

Ⅲ-6 再生支援機構のスタッフ来院

Ⅲ-7 再生支援機構に支援をお願いするか?

Ⅲ-8 常勤医二人のみ

Ⅲ-9 再生計画をめぐる綱引き

Ⅲ-10 債務カット10億!

Ⅲ-11 最終決断、連帯保証を引き受ける?

Ⅲ-12 医師が一人増えるって大きいです

Ⅲ-13 支援機構から再生支援を受ける事を発表

Ⅲ-14 債務超過で実は困っていた事

 4章 支援開始から卒業まで

Ⅳ-1 支援開始

Ⅳ-2 病院の利益についての一般論

Ⅳ-3 利益を増やすには?KPI・KGI

Ⅳ-4 利益を増やすためには経費を削ればいいのでは?

Ⅳ-5 順調な経過

Ⅳ-6 卒業が視野に

Ⅳ-7 気が付けば卒業

Ⅳ-8 色々書けなかった事