旧知の小児科医、田舎で窮地に#1

旧知の小児科医

私の大学時代からの友人で、小児科の先生がいました。その先生は小児科医になるくらいですから非常に真面目な先生で、名古屋大学の小児科医局に所属していました。名古屋大学の小児科医局は、他の医局と同じように医局人事があって基本的に独身の男性は遠くに飛ばされやすいというよくある医局でして、彼もある山深い地方都市の中核病院に赴任を命じられました。

地方都市の小児科医は激務

その病院は結構田舎にあるのですが、田舎ゆえに医療圏が広くて人口密度は低いけど、医療圏内人口は多い病院でした。常勤医3名、コール当番が週2,3回あって、出産も扱っている病院でした。コール当番なんだから呼ばれない時もあるとお思いになるかもしれませんが、小児の急患だけでなくて出産などでも夜中に呼ばれるので、コールといっても実質ほとんど当直のようなかなりの激務と想像されます。

睡眠不足と激務で窮地に

彼のその病院への赴任と、私の相模湖病院への転職は同時期で、距離は遠く離れていましたが、定期的に連絡はとっていました。当時は以前からしていた非常勤の外来を名古屋でまだ月に一回ほど続けていたので、2,3か月に一度会ってました。「転職して急に理事長になることになりそうだよ」などの相談もしていました。彼は基本的にストイックでハイパーな人間でしたが、やはりそれだけコール当番が頻回にあると、激務と睡眠不足が重なり疲れが溜まっていったようです。会うたびに、徐々に元気がなくなっていってしまって、まさに過労による適応障害になる一歩手前という感じでした。

サテライトクリニック院長を打診

続きを読む

Ⅲ-5 メインバンクからの提案

名ばかりとはいえ理事長になりましたから渉外業務も少しずつ出てきます。病院の改革と並行して少しずつこなしていきました。

メインバンク担当者と面会

当時のメインバンクは某大手地方銀行で、そこから10億円強の借入金がありました。債務超過になっていますから、うちの担当は支店の担当者ではなく、経営が危ない取引先を担当する本部の部署が担当でした。いいスーツを着たその担当者と面会すると、「法人の最高責任者である理事長と連帯保証人が異なるというのはコンプライアンス上好ましくない」という事を言われました。遅かれ早かれそういう事を言ってくるだろうと予想していたので、「とはいえ、わたしとしても自分に一切責任のない債務の事は責任を持ちたくない、むしろここまで貸し付けた方の責任もあるんじゃないですか?」と返しました。

メインバンクからの提案

続きを読む

Ⅲ-3 病院の改革は遅々として進まず

という事で入職半年弱で雇われ理事長へと就任してまずは病院の改革です。

病院が大きく赤字の理由

引き受けた記事には書きませんでしたが、200床弱の病院がそこそこ満床で年間8000万超の赤字ってありえないから、もう少し普通にやればもっと業績は改善するだろうという何となくの見通しもありました。
実は後々知る事になるんですが、この8000万の赤字というのは裏があって、本部経費(借入金の利息だけで6000万超で、本部経費の総額は不明でした)を会計処理上全額病院の経費として算入していました。としても病院単体で0~2000万程度の黒字とみなされますからもう少し何とかなるはずです

経営面の改革に手をつける前に

経営的な事はひとまずおいて、臨床面の充実と、仕事の効率アップに取り組もうと思いました。本来の業務に割ける労力を増やす事ができますから、仕事の効率アップは必要です。また、臨床面を充実させる事はこういううまくいっていない病院の場合は必須と考えられます。医療・介護職の方々に経営の事を言うと、「それは患者(利用者)のためにならない」というようなエクスキューズを声高に唱える人が必ず現れます。多くの場合、そういう人はそれをエクスキューズにしているだけで、現状のぬるま湯体質が居心地のいい方たちです。そこで、いい医療を提供するためにこれは必要です、とこちらも主張する必要があるわけです。

実際には経営面の改革に手をつけるには当時のわたしはスキル不足だったというのもありました。

臨床面の充実のために

続きを読む

Ⅲ-1 理事長を引き受ける?

このような状況で皆さんなら理事長を引き受けますか?

もし理事長を引き受けたら最大のリスクは?

当時のわたしもかなり悩みました。連帯保証人にはならなくていい、と言われていましたが、この点は遠からず、銀行から何か言ってくるだろうという予感がありました。ではもし連帯保証人を引き受けたらどうなるのでしょうか?
億単位の借入金ですから、一般人のわたしが、矢沢の永ちゃんみたいにCM出まくって何十億の借金返すとか無理ですし、自己破産するしかないのは明らかでした。

その頃のわたし自身には資産らしい資産は貯金が500万程度あるのみでしたので、経営再建に失敗して自己破産してしまっても失うのはその500万だけです。

続きを読む

Ⅱ-6 借金20億!債務超過?BS?PL?

遠からず院長になることは内心想定していましたが、理事長って普通ならないですよね?それにはもちろん理由があるわけでして

債務超過と言われても

理事長を依頼された時に法人の財務状況の説明を受けました。入職前は全く知らなかったのですが、借入金が約20億円あり、債務超過が10億程度とのことでした。当時私は財務諸表を見たりだとかそういったことは全く知識がなくて、債務超過?BS?PL?経常利益?ってレベルでしたのでその場で決断できるはずもありません。いったん持ち帰らせてもらって、まずはkindleで100円とか無料の決算書の読み方的な本を何冊か読んでみました。付け焼刃ではありますが、財務諸表については少し理解しました。(債務超過や、財務諸表の見方については別のページを用意する予定です。)

当時の東華会の財務状況

続きを読む

Ⅱ-4 不思議なマネジメント形態

通常の病院では、経営者として理事長がいて、院長、事務長、看護部長の三人がそれぞれの現場のトップで、そのメンバーが運営の中心という形態が多いのではないかと思います。

マネジメントを誰がしているのかわからない

相模湖病院に入職当初は、この病院はどこでなにがどのように決まっているのかよくわからないな、という印象を抱いていました。
何か新しい提案をしても、なかなか結論が出ないし、場合によってはうやむやなまま月日が過ぎるだけでした。

当時の相模湖病院は院長は前述のような方で(トンデモ院長part1)ありましたからもちろん病院の運営にはノータッチでした。

不思議な運営状況

続きを読む

Ⅱ-5 入職一か月で理事長??

合議制で運営している事は何となくわかってきましたが、理事長はいったいどこにいるのでしょう?

理事長は雇われ理事長

雇われ院長というのはよく耳にすると思います。当時の相模湖病院には理事長はもちろんいたのですが、その人は変な言い方ですが雇われ理事長で、以前に相模湖病院で非常勤をされていた先生に名前だけ理事長をお願いしているという状況でした。実質的には会長と呼ばれる人がいて、その人がオーナーでした。オーナーは相模湖病院の開設者の息子さんで、医師免許が取れなかったので理事長になれず、会長という役職でオーナーとして仕事をされていました。

オーナーの急逝

続きを読む

Ⅱ-3 トンデモ精神科医

院長は事前に聞いていた以上のトンデモぶりでした。ですが、さらに以前の相模湖病院にはもっとすごい先生たちがいました。

院長はトンデモでしたが、部下の方は?

院長は前述のとおりの方でしたが、部下の方はといいますと、残念ながらこの先生はまともに精神科医としてのトレーニングを受けていらっしゃらないのではないかというのがわたしの印象でした。

処方をPSWに相談するの?

続きを読む

Ⅱ-2 トンデモ院長part2

転職先の院長は勤務時間もトンデモでしたが、診療内容もトンデモでした。

Hba1cを週に二回検査

当時の院長は検査の仕方がめちゃめちゃで、たとえば糖尿病の患者さんがいらっしゃるとヘモグロビンa1cの検査を週に2回3回とオーダーしていました。すべての検査がその調子で、当然ヘモグロビンa1cを週に2回3回と検査してもレセプトは通らないので持ち出しになるわけです。それを医事の人間が院長に進言すると、「それを通すのがお前らの仕事だろう」と言って怒鳴り、カルテを投げつける始末でした。

外来は一日三人まで?

続きを読む

Ⅱ-1 トンデモ院長part1

相模湖病院へと転職して勤務が始まるとまず驚いたのが当時の院長でした。

院長は14時半に出勤?

4/1からいよいよ勤務を開始しても、なかなか院長に挨拶する機会がありませんでした。というのも院長は週に4日出勤しているのですが、出勤時間が14時半くらいとまさに重役出勤で(重役の出勤が遅いのは夜遅くまで渉外活動をしているからでさぼっているわけではありません)、毎回1泊2日で病院で仕事をしていらっしゃいます。14時半に出勤した後、夕方過ぎまで院長室に引きこもっていて患者さんの診察は夕方過ぎから夜にかけてやられていました 続きを読む